アマゾンプライムビデオで『Let's 太って痩せるダイエット』(原題:Fit to Fat to Fit)を鑑賞。トレーナーが肥満の依頼者の悩みを心身ともに理解するために数ヶ月かけて増量。そこから一緒にダイエットに挑戦するというアメリカのTV番組。
昨今流行のドキュメンタリー番組風のリアリティショーなので、どこまでが事実で、どこからが演出なのか、眉に唾付けながら見ているのですが、番組前段の『ムキムキマッチョのトレーナーがブヨブヨに太っていく』くだりは流石にヤラセはなしのはず。なかなか鬼気迫るものがあります。
子供の顔より大きくて分厚いハンバーガー、ピザには山盛りのチーズが糸を引き、フライドチキンは脂にまみれて艶めかしく光る。パントリーには大袋入りのスナック菓子、冷凍庫には大量のアイスクリーム、箱いっぱいに詰まった色とりどりのドーナッツはまるでホーマー・シンプソンの夢。とにかく高カロリー高脂質で糖質たっぷりのジ・アメリカン・フード。そりゃコレ食って太るなって方が無理だわなぁ。
間違いなく普段ならジャンクフードに手を伸ばすどころか近寄りもしなかったであろうトレーナーが、それらを一日中えづきながら口に押し込む。胃が受け付けなくて嘔吐しても食べる。頭を抱え、涙を流しながら、それでも食べる。運動は痩せちゃうから一切禁止。
するとどうなるか。みるみるうちに身体に脂肪がまとわりつく。顔はむくみ、腹は突き出て背脂たっぷり。腕や脚は緩んでタルンタルン。普段の姿勢も悪くなってくる。と同時にメンタルにも変調が現れる。フィジカル・エリート然としていた表情から自信が剥がれ落ちる。感情の起伏が大きくなり、怒ったかと思えば鏡を見て落ち込む。家族との関係にも軋みがあらわれ、生活からは笑顔が消える。
これからダイエット指導を受ける依頼者は、そんなこと百も承知とばかりに「あいつ、俺みたいにジャンクフード中毒にならなきゃいいけどな」とヘラヘラ。肥満という蟻地獄の底でひたすらもがき続けるしかなかった人間のカラカラに乾ききった笑顔はなんとも言葉にしづらいものがあります。
もし、この番組を見られる環境にあるのなら、この前半部分だけでも見るといいかも。色々考えさせられます。我が身を振り返る良い機会になるかも。ただし繰り返すけれど、あくまで『リアリティショー』なので見るなら『眉唾』は忘れずに。
あえてネタバレをしておくと、後半部分でどうやって依頼者とトレーナーが痩せるのかについては番組中で具体的に参考になるような描写はないので念のため。やっているのは食餌制限と運動。おそらく食餌制限は低糖質(プラス高タンパク)、運動はブートキャンプ式サーキットトレーニングが好まれている様子。
いずれもダイエットにおける王道。やってることは大筋でライザップと大差ないはず。ここで誰も知らない新しいダイエット法や常識を覆す画期的なアイテムやサプリ(そんなものは絶対に存在しない)を出さないところは流石。日本のダイエット番組制作者はこの点に関してだけはアメリカTVマンの爪の垢を煎じて飲むべき。
最後に蛇足ながら、肥満の大きな要因のひとつであるはずの「アルコール」については番組中で全く言及なし。そこに肥満の原因がない依頼者を選んだのか、あるいはコンプライアンス上お酒に関しては取り扱えなかったのか。そこら辺はやっぱり『TVショー』だから仕方ないのかねぇ。
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