2023年6月21日水曜日

関節は消耗品

 私がこの商売を始めた15年前と比べて、大きく影響力を落としたものに『テレビの健康番組』があります。かつては健康番組が放映された翌日に「昨日、テレビでやってたんだけど……」と切り出す患者さんが必ずいらっしゃったので番組のチェックは欠かせなかったのですが、最近は月に数人いるかどうか。

 これも時代の変化なのでしょう。それでも気になるトピックの回は極力視聴するようにしています。先日見たのは『膝の痛み』についての番組。特筆するような内容でもなく、横目で「まぁ、こんなもんだろうねぇ」と思いながら見ていましたが、最後の最後にちょっと気になる内容が。

 膝痛治療の最後の手段として、人工膝関節置換手術を紹介していたのですが、その内容があまりに楽天的で、ちょっと無責任にさえ私の眼には映りました。

 番組中では80才過ぎの男性が手術を受け、翌日にはリハビリ開始。「早く歩けるようになって、またゴルフをやりたい」と。VTRを見たスタジオの司会者やゲストは男性を励ますようなコメント。

 皆さん、人工膝関節に夢を見すぎじゃないですか? どんなに術式が進歩しようと、インプラントの素材が軽く強くなっても、最終的に歩けるか否かは患者さん本人の体力筋力にかかっています。

 手術を受けただけでスイスイ歩けるようになるはずもなく。死に物狂いでリハビリ筋トレをやったとしても、杖を付いて屋内を移動するのが精一杯だったり、結局は歩くこともままならなくなって準寝たきり状態となったり。そんな患者さんを大勢診てきました。

 テレビが社会の公器を自称するならば、そのリスクを含めて取り扱うべきだと思うけどなぁ。

 人間の身体は基本的に消耗品です。使えば劣化するし、無理をすれば壊れます。関節、特にお膝は全体重を支えつつ日常的に大きく動かしている部位ですから、特に消耗しやすいと言ってもいいでしょう。天寿を全うするまで自分の足で歩くには、膝に負担をかけず、なおかつ脚の筋肉を衰えさせない努力が必要です。それでも老いによる衰えは万人に忍び寄ってくるものですが。

 これは余談ですが、筋トレ系YouTuberと呼ばれる人々がよくトレーニング動画をアップしています。目玉の飛び出そうな高重量を扱っていますが、あーいうのを安易に真似しちゃダメですよ。彼ら彼女らは環境と遺伝子に恵まれた特殊な人たち。そして自らの肉体を擂り潰してでも大金を稼ぎたいプロ。凡人アマチュアが真似しても一銭の得にもならんばかりか、結局は身体を壊してチョンですよ。ささやかな自己顕示欲や承認欲求と引き換えにするにはあまりに割に合わなすぎます。

 さらに脅かすわけじゃありませんが、関節って無理や無茶を掛けると、そのストレスを『溜める』んです。若い頃は頑丈なのが自慢。どんなに無茶しても痛みひとつなかったはずが、ある日突然の激痛。曲がらなくなる、伸びなくなる。画像診断を受けると酷い変形。昨日までは普通に動かせてたのに? こういう患者さんも毎年必ず何人か。

「人生一度っきりだから好きなことをやる」とか「俺はこれに人生を賭けてる」とか「やらない後悔よりやった後悔」とかってカッコいいこと言ってても、我が身を取り返しのつかないほど壊してしまった時の痛みと不自由さの前には心はボッキボキに折れまくって、精神的にも肉体的にも二度と立ち上がれない人も実は多かったりします。よーく考えましょう。再度言いますが、あなたの肉体は人生ひとつっきりの消耗品で、代えは絶対に効かないんですよ。


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【今日の筋トレ】
(胸)バーベル・ベンチプレス 72.5kg 3×8
   フラット・ダンベルフライ 24kg each 3×8
   ペックマシン・フライ 46.3kg 3×12
(脚)バーベル・スクワット(ローバー) 92.5kg 4×5
   スミスマシン・ハックスクワット 48.8kg 3×10
   マシン・レッグカール 57kg 3×10
(上腕)プリーチャーカール 22.5kg 3×10
     &フレンチプレス 22.5kg 3×10(スーパーセット法)
(体重)81.0kg

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