数日前から急に右肩に激痛、腕が上がらなくなったというご婦人。原因の心当たりを聞くと「リュックサックを使い始めてすぐにこうなって……私には似合わなかったからかしら?」と。
可動域を確認すると、案の定肩関節が外れちゃっています。と言ってもブラブラになって動かせない完全脱臼ではなく、上腕骨頭(腕の骨)が関節窩(腕の骨が嵌る凹み)からほんの少しだけズレてしまっているだけ。レントゲンやCT、MRIで見てもよほど注意しなければ分からないくらいのわずかなズレですが、それでも激しい痛みや可動域制限を引き起こすことがあるのです。私たちはこのような症状を昔から『亜脱臼』と呼んでいますが、最近はお医者さんもこの言葉を使うようですね。以前は「そんな症状は存在しない」とおっしゃっていたようですが。
ともあれ、これは当流の得意分野。グリッとやって、クニクニッとやって、チャチャっと整復。「あ、(腕が)上がる!」と喜んでいただきました。ただ、亜脱臼した状態で数日痛みを堪えて無理をしていたため、肩関節周辺の筋痛みを起こしています。できれば二日間は三角巾で腕を釣って養生するようにお願い。「大げさすぎると思うかもしれませんが、その方が家事でご家族の協力を得やすいでしょ?」とウインク。
このような『リュックサック脱臼』は年に数人ある定番の症状。原因はリュックサックが「(似)合う、(似)合わない」ではなく、背負う際に無理に背中側に腕を回したせい。リュックを背負う時はショルダーストラップ(背負い紐)を長めにしておいて、腕を通してから締めて身体に合わせるようにしましょうね。
ちなみにこの症状は老若男女関係なく、ピカピカの小学一年生がランドセルで肩を痛めて来院したことも。子供は関節が固まりきっておらず筋肉も柔らかいので、状態を確認しようと触っただけで「クチュッ」と関節が戻って痛みも全く残らず。ついさっきまで青い顔でベソをかいていたお子さんがブンブン腕を振り回して喜ぶのを見て「魔法のようだ」と親御さんに大層驚かれましたが、大人の場合はそうはいきません。放置すると悪化して五十肩の長患いになってしまうことも。もし心当たりがおありならば早めのご来院をおすすめしますよ。
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