2018年6月22日金曜日

体幹、半端ないって⁉︎

 ワールドカップでの大番狂わせ金星に未だ興奮冷めやらぬ日本ですが、勝利の立役者である大迫勇也選手が熱心に取り組んでいるという『体幹トレーニング』について。



 曰く「体の大きな海外選手に当たり負けしなくなった」。あるいは「呼吸に使う筋肉が発達したので持久力が上がった」などなど。

 予言(?)しておきましょう。必ずや第二次体幹トレーニング・ブームがやってきます。テレビでもガンガン紹介されるでしょう。そんな素晴らしいトレーニングがあるなら、私もやりたい。今すぐやりたい。早く教えてくれ……という方も、きっと増えるでしょう。

 でもねぇ、これもハッキリと断言しておきます。体幹トレーニング“だけ”をやったって、大迫選手みたいになれるどころか、屁のツッパリにもなりませんよ。

 そもそも、体幹とは人体のどこを指すのかご存知ですか?

 一般的には『胴体部分』を意味することが多いようです。つまり、左右の肩関節と股関節を結んだ四角形内はすべて『体幹』です。しかし、これだとちょっとおかしい。

 この範囲内にある大出力の『大胸筋』は『胸』と分類されて、そこを鍛えるトレーニングは別途確立されています。同様に出力の大きな『腹直筋や斜腹筋』は『腹部』、『僧帽筋や広背筋、脊柱起立筋』などは『背中』などとされてきました。今更それらを統合して『体幹』と呼ぶのはなぜでしょう? ちなみに『体幹筋』なんて筋肉は人体に存在しません。

 これは体幹トレーニングとは「どこかを鍛えて強くする」トレーニングではなく、「大きな力を持つ筋肉の力を効率的に伝達、出力するための」トレーニングだからなのです。

 先に書いたように、胴体には大きな出力を出せる強力な筋肉があります。しかし、この力を末端部(投げるなら手先、蹴るなら足先)や、さらにはそこから先の道具(野球ならバット、テニスのラケット等)に伝えるのは簡単ではありません。

 よく「ボディビルダーの筋肉は見せかけだけ。使える筋肉は別」と揶揄する人がいますが、バカを言っちゃいけません。筋肉に『見せかけ』や『使える』なんて違いがあるもんですか。単純に太い筋肉ほど出力も大きいのです。そして、あれほど筋肉を大きくするには並々ならぬ時間と厳しい鍛錬が必要です。彼らを侮っちゃいけません。

 あの筋量(重さ)と筋力で、単純に力任せにブン殴られたら、蹴っ飛ばされたら、武術や格闘技の技術やテクニック云々以前の問題として私は立っていられる自信はありません。それだけの脅威です。半端ないっスw

 ただ、これがスポーツ競技となってくると話は別。腕が太いからってバットを持たればホームラン連発……とはいきません。足がガッシリしてるからってサッカーボール蹴らせればハットトリック……ともいきません。「筋肉が大きい=競技が上手」ではないのです。

 そのギャップを埋めるのが『体幹トレーニング』なのです。胴体にある大きな筋肉の力をロスなく手先、足先に伝える。あるいは大出力の下半身の力を、それより劣る上半身に伝える。その力の伝達のハブとなっているのが体幹。この使い方、つまりは巧緻性や技術を学び鍛えるのが『体幹トレーニング』なのです。

 私は仕事柄、プロスポーツ選手や、それに準じる専門職の方のお身体を触ることがあります。あのね、彼らの肉体はそりゃあ凄いですよ。「よくぞここまで!」と、老若男女の人体を触り慣れている私でもウットリするくらいに鍛え上げ、研ぎ澄まされています。

 体幹トレーニングは、更にそこから動きの無駄を省き、上手に身体を使おう……って時に初めて活きてくるトレーニングと言っていいでしょう。

 だから、あえてキツい言い方をすると「そもそも普段鍛えてもいないナマクラな身体で体幹トレやったって何の意味はない」のです。

 さらに、ここで白状すると私自身も数年前より折に触れて(あからさまに言うとテレビに踊らされて)体幹トレーニングにハマってた時期があるんです。「お、これなら道具もいらないし、いつでも出来るやんけ。これで釣書通りに身体が引き締まるなら儲けモン」と関連書籍を買い込み、プランク・チャレンジなんてのもやったこともありました。でもまぁ、結果からいうと、全てがまったくの無駄でした。

 もっとブッチャケると、年単位で毎日欠かさず体幹トレをやってた頃より、週2回ジムに通ってバーベルだのダンベルだのを振り回してるここ2、3ヶ月の方が遥かに効果が上がってます。肉体は変化しています。締まってきてます。いい感じです。

 どうぞ皆さま、来るべき体幹トレーニングのブームに騙され(?)踊らされることがございませんように。多分、今後は雨後の筍の如く体幹トレ専門のパーソナル・ジムも乱立するでしょう。再度断言しますが、そーいうのに大枚叩いて通っても、ぜんッぜんッッ意味ないですからねッッッ!


追記1:それでも、私は患者さんによっては「何でもいいんです。身体を使うことです。腕立て伏せの準備姿勢で、腕は曲げ伸ばしせずにジッと30秒耐える(体幹トレーニングでいうところのプランク)だけでもいいんです」とアドバイスすることも。

 私はリハビリに関しては「50と100の差よりも、0と1の差の方が大きい」と例えます。どんなに小さな負荷でも「やらないよりマシ」だと思っています。その段でいうと、体幹トレーニングのメニューは著しく体力の衰えたご年配の方でも気軽に始められるし、複数の筋肉に同時に負荷をかけ、刺激を与えることができるので、ちょうど良い塩梅なのです。


追記2:以前このブログで書いた『弱足ペダル 〜私がエアロバイクをオススメしない理由』においても同様の誤解が生じているようなので追加説明。この投稿の中で私はこう書いています。

“とはいえエアロバイクが全く無駄だというわけではありません。負荷が小さいからこそ誰でも気軽に始めることができるし、心肺機能を高める良いトレーニングになります。ただし、再度申し上げますが、どんなに一生懸命エアロバイクを漕いでも、それが歩行のための筋力強化には繋がりません

 あくまで私は『歩行のための筋力』と断っておいたつもりなのですが「エアロバイク(もっと過激になると自転車そのもの)は無駄だ。意味ない」と受け止められた方が複数出てしまい、ちょっと困惑気味。

 文章のみで他者に何かを伝えるって、難しいねぇ。そりゃヨハネによる福音書の冒頭で『はじめに言葉ありき』って断り書きを入れるはずだわ(汗

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