2017年3月16日木曜日

院長は隠遁者?



ある日の患者さんとの会話。

「先生のトコロって、普通の人だと辿り着けないですよね」

「そうですねぇ、場所は辺鄙な町外れだし、表通りに看板も出してないし、この間も2〜3キロ離れたところに住んでらっしゃる方に『もう9年もやってる? 知らなかったやぁ!』と驚かれました」

「じゃあ新しい患者さんはどうやって見つけてくるんですか?」

「最近の新規の方は殆どお馴染みさんからの紹介ですからねぇ。広告でも打てばいいんでしょうけど、何しろ私は『仕事』が嫌いな怠け者なんで。施術は大好きなんですけどねぇ。んじゃ、今年は少し頑張って宣伝でもしてみましょうか?」

「あ、いや、それは止めておきましょうよ。混雑して予約が取りづらくなったら私も娘たちも困っちゃいますから(笑)」

 わはは、それは杞憂ですよ。

 どんなに宣伝しても門前市をなすような大混雑にはならないだろうし、テレビに出てくるようなカリスマ整体院になんてなれるはずもないし、なりたくもないです。そもそもウソかホントかも分かりませんが、予約を取ろうとしたら数ヶ月待ちとか数年後なんて、痛みに悩み苦しむ人の助けとなるべき療術院としての機能を失ってるとしか思えません。

 「ヒマだヒマだ」が口癖になりつつも、夫婦二人と猫二匹が屋根の下に暮らして三度三度のおまんまを頂けるほどは稼がせてもらい、上記の患者さんのように、私を頼りにしてくださる方々に喜ばれるように誠心誠意の施術を行う。これだけでも私には過ぎた幸せです。

 組織の中で生きるには不器用で、人付き合いも苦手、性格にも難ありで、根拠のない自信と現実とのギャップにクヨクヨと悩んでいるか、そんな不安を悟られまいと無理に虚勢を張って他人の不興を買い、結果心と体のバランスを崩してボロボロになった若い日々。

 あの頃と比べたら、今の平穏な暮らしは天国です。誰に指図されるわけでも、誰の顔色を伺うこともなく、ただ出来ることを一心にやるだけ。それで人様に喜んでもらえるのですから、こんな素敵なことはない。

 そういえば、私は子供の頃から『ムーミン』のスナフキンや、『徒然草』の兼好法師、俳人種田山頭火らの『隠遁者、世捨て人』に強い憧れを持っていましたが、気がつけば、それに近しい生活をしているのだよなぁ。三つ子の魂なんとやら、かな。

0 件のコメント: