2015年9月3日木曜日

俺のどこが悪いってんだよッッッ!

「腰痛ということですが、今どんな具合ですか?」

「もう痛み始めて10年以上なんですけど、最初に行った病院では何番だかのナントカ椎間板ヘルニアって言われて……」

「ふむ、その時には『手術をしましょう』とかは言われませんでしたか?」

「いえ『手術するほどじゃないから』って、しばらく安静にしてたら痛みは治まったんですけど、5年くらい前にまた激しく痛んで、別の病院に行ったらナントカすべり症って言われて……」

「あらま、痛みの感じは最初の時と違いましたか?」

「いえ、同じような痛みです。で、その時も自然と痛みは引いたんですけど、それがまた出てきて……」

「今は病院には?」

「行ってます。で、今度は心理的なナントカが原因かもしれないって言われてて、不安を取るお薬を出してもらってるんですが……」

「そのお薬飲んで、痛みは和らぎましたか?」

「いえ、それがぜんぜん効かなくて……、あのぉ……」

「はい、なんでしょう」

「あのぉ……私の腰はどうなっちゃってるんでしょうか? そんなに私の腰はあちこち悪いんでしょうか?」

 まるで笑い話ですが、割と良くあるケースです。

 ふた昔前、腰痛で病院に行くと片っ端からレントゲンを撮られ、椎間板に少しでもふくらみや歪み、はみ出しがあると『椎間板ヘルニア』と診断されました。

 その後、MRIやCTなどの検査機器が発達して、そんな乱暴な診断が減ったかというと、そうではなく、今度はわずかな椎骨の捻じれや傾きから『すべり症』や『分離症』なる診断が乱発されました。

 そして、現在では原因不明の腰痛はストレスから脳内の情報伝達が混乱することによって起こるという説が最新のトレンドです。

 まるで、当たるも八卦、当たらぬも八卦。

 ホントかウソか分かりませんが、聞くところによると、保険診療制度では『コレコレの症状に、コレコレの治療投薬をしました』とハッキリさせなければ点数が付かないため「原因不明、分かりません」と白旗を上げることができないのだとか。その結果が上記の患者さんのようなことになる。

 神話の昔から世の東西を問わず、名前とは“呪い”なのです。

 ただでさえ「痛い、辛い」と感じている人に、権威ある人が「それは×××である!」と難しい症状の名前を告げてごらんなさい。患者さんの中では不安や苦痛が倍加するのは当たり前でしょう。

 しかも、ただでさえ診断にショックを受けているのに「手術するほどじゃないけどね」とか「治らないから一生付き合うと思ってね」とか軽〜く言われて、毎度毎度の湿布と鎮痛剤と胃薬とビタミンB12(効能は末梢神経の回復らしいけど、これが痛みに効いたって話を自分の経験も含めて聞いたことない)を持たされて、腰をかばいながら歩む帰路の虚しさたるや!

 ちなみに、上記の患者さんは当院の施術を受けて、私の説明を聞いて「痛みが取れて楽になりましたし、自分の体の状態がよく分かりました」と、以降も定期的に通ってくださっています。

 私がやったのは、四百年以上前から伝わってきた通り、師匠から教えられた通りに『外れてるのを嵌めて、傾いてるのを真っ直ぐ』にしただけ。そんなに難しいことはやってません。師匠曰く「こんなん、喧嘩が強いだけが取り柄の柔術(やわら)のセンセかて出来るもんや。そんなややこしコトないわい」とのこと。

 人間の身体ってのは頑丈なようでいて脆いし、複雑なようでいて単純なのです。

 もちろん、当流の療術技法が全てのあらゆる痛みや苦しみに対応できるとは口が裂けても言えませんが、現代の医療制度からこぼれ落ちてしまった諸症状のセーフティネットとなっているのではないかと密かに自負しております。

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