2015年8月21日金曜日

整体に『ゴッドハンド』なんて、ない!


 手技療術の世界で腕の立つ先生を褒め称えるために『ゴッドハンド』なる言葉がよく使われます。健康雑誌然り、テレビの健康番組然り、書店へ行けば『あなたの腰痛(肩こりでもいいや)をたちどころに解消するゴッドハンド云々』なる書籍を必ず見つけることができるでしょう。

 はっきり言います。私、これが大ッ嫌いです。

 確かに手技療術は職人仕事の世界です。上手下手がはっきりとあります。流派や系統によっても大きく違ってきます。同じ整体を看板に掲げるA派とB派では施術に際して180度の違いがあることも珍しくありません。

 しかし「どんな痛みもたちどころに治す」ような秘術も魔法もこの世には存在しないのです。ただ、それぞれの流派において出来る限りの技術を尽くして取れる痛みを取り、苦しみを鎮めるだけ。

 さらに言うなら、肩こりや腰痛などに現在の医療の主流となるエビデンス(臨床結果主義)は当てはまりません。例えば腰痛。痛む場所は同じでも、それを引き起こしている原因が股関節であったり、仙腸関節のわずかなズレであったり、腰椎の歪みであったり、臀筋群の緊張であったり、座骨神経の圧迫だったり、実にさまざまです。当然ながらアプローチは異なります。これを可視化点数化しろ、診療時間を均一化しろといっても到底無理な話です。

 もっというと、整形外科のお医者さん方は腰痛に関してそこまで細かく目配りしていないでしょう。「命にかかわるわけじゃなし、鎮痛剤と湿布出しとけばいいだろ」と相変わらず軽く見てるのを患者さんからの話で常々感じています。そうやって現在の保険診療制度において肩こりや腰痛への対応はないがしろにされ、後回しにされてきたといっても良いのではないでしょうか。

 当院において、施術はすべてにおいて個々の患者さんに対してオーダーメイド……ってのはカッコつけ過ぎだけど、いうならば『現場合わせ』です。だって、ひとりひとり違うんだから仕方ない。「当院では“ここ”を痛めた腰痛の方しか治せません」なんて看板に書けるかいっての。

 そこで例え話、長年悩んでた腰痛が解消された若い太郎さんが「あそこ良いから行ってみなよ」とお年寄りの花子さんに当院を紹介したとして、年齢も性別も生活環境も違う花子さんが間違いなく同じように治るとは限りません。当たり前の話。

 もちろん、せっかくご紹介を頂いて来てくださった患者さんなのだから痛みから解放されて気持ち良く帰っていただきたい。しかし、それが叶わなかった夜は晩酌しつつ「あそこの関節を見落としてたんじゃないか?」とか「こっちの筋を緩めればまた違ったんじゃないか?」と、布団に入ってからも鬱々と考え続け、朝まで寝付けないこともあります。昔からこの業種は『按摩の掴み取り』なんて揶揄されることもありますが、そんなにお気楽極楽な稼業じゃないんですよ。

 それを、やれ『ゴッドハンド』だの『神の手』だの、十把一絡げにしてテメェんとこ来れば何でも治せるようなミスリードして。そんなことあり得ないのは現場に立ってる自分自身が一番わかってるはずなのに、恥ずかしくないのかねぇ。

 まぁ商売が上手なら、間違ってもこんなことは書かないで、運良く(?)痛みから解放された患者さんの笑顔の写真とコメントをブログにアップして「うちに来れば治りますよ。こんなに腕がいいんですよ。上手いんですよ」とアピールするんだろうな。

 うん、私にゃ無理。私は施術において自分に出来ることを精一杯やるだけ。そうやってこれまでもやってきたし、これからも変えるつもりはありません。だって、人を騙すことは簡単でも、自分を騙すことはできませんから。そして、自分に騙されたフリをするのって、すっごく気持ち悪いですからね。


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