2013年11月4日月曜日

『疾患名』という呪い



【ケース1】

「先生、私の腰ヒドいでしょ?」

「う〜ん、軽症ではないですねぇ」

「そうでしょ。もう20年になりますから。その時は病院で“ヘルニア”って言われました」

「なるほど。しかし今は椎間板ヘルニアは出てないですよ」

「そうでしょ。その次に行った病院では“キョウサク症”だって」

「ん? こういう痛みの出方は脊椎間狭窄症の症状ではないですよ」

「そうでしょ。去年は“ブンリ症”って言われたんですよ」

「………はぁ」

「でね、先生、私の腰痛の原因は何なんでしょうね?」

 椎間板ヘルニアも、脊椎間狭窄症も、腰椎分離症も、酷い腰痛を引き起こす疾患ではありますが、この三つが併発している方を私は見た事がありません。というより、万が一にも併発したならば、当院に歩いておいでになることなど不可能です。なぜ医師によって診断がコロコロ変わるのでしょう?

 腰痛の原因にはなぜかトレンドがあって、同じ症状であっても受診した年代によって疾患名が変わります。そして、テレビの健康番組やお医者さんの書く腰痛予防本に、その疾患名が多く取り上げられます。なぜでしょうねぇ。

 ちなみにこの患者さんの腰痛の原因は全く別のところにあり、当院での調整で長年の腰痛から解放されたと大喜びでした。


【ケース2】

 ギックリ腰だと駆け込んで来た患者さん。

「これはギックリ腰ではなくて、ごく軽い急性の“椎間板ヘルニア”です。背骨を整えておきましたから、これで痛みは取れるはずです。もし一週間たっても痛ければもう一度見せてくださいね」

 一週間後、この患者さんから電話がかかってきました。

「先生、あの後に病院に行ってきたんですけど、検査の結果“椎間板ヘルニア”ではないって」

「ほう、では何が原因だと?」

「お医者さんは『分からない』って」

「……なるほど。それで、まだ痛いですか?」

「いえ、痛みはすっかり取れました」

「で、病院で何か治療を受けたのですか?」

「いえ、なにも。痛み止めと湿布を貰っただけです」

「そうですか。じゃあ良かったじゃないですか。ヘルニアが治って、痛みも取れたんだから」

 患者さんの声はなぜか少し不満そうでした。軽い椎間板ヘルニアの場合、施術によって椎間板が元の位置に収まります。レントゲンを撮っても、MRIやCTスキャンにかけても写りゃしません。私たちはそんな大仰な道具を使わなくても、指先の感触と四百年以上の経験の蓄積から皮膚の下、肉の奥の骨の状態を読み取ります。

 しかしまぁ世間的に、最先端の医療機器と、一介の整体師の指先と、どちらを信じるかと聞かれれば……ねぇw 


【ケース3】

「先生、こんなに痛いのに病院では『どこも悪くない』って。“老化”のせいだって」

 ベッド上でうつぶせや仰向けに体位を変えるのにも悲鳴を上げる患者さん。

「あ、これは折れてます。“圧迫骨折”です。背骨のひとつに大きな力が加わってヒビが入っちゃってます。前に行ったのとは別の、できるだけ大きな病院でもう一度受診してください。しばらくは絶対安静になるはずです」

 数日後、この患者さんから電話がありました。

「先生のおっしゃった通り、やっぱり圧迫骨折でした。今日から一週間入院です」

 患者さんの状態を観察し、患部を触ればすぐに分かるはずなのに、なぜ最初の病院では見落としたのでしょうか。電子カルテを付けるのに忙しかったから? たまにはモニタから顔をあげて患者さんと正面から向き合っては如何ですかねぇ。

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