2011年2月28日月曜日

関連痛とメディア・バイアス

「この痛みって、もしかして膵臓が悪いってことないですかねぇ」

「これって胆石から来る腰痛だったりしませんか?」


腰痛、あるいは背部痛に悩む患者さんによく聞かれます。

内蔵に癌などのトラブルが起きると、問題の部位とは関係ないはずの体表に痛みが出ることがあります。いわゆる『関連痛』です。

なぜこのようなことが起こるのか? ざっくり説明しましょう。人間の神経は脳から太い神経の束(脊髄)が背骨の中を走り、そこから背骨の関節毎に枝分かれして全身にのびています。この時、小分けされて背骨から出てきた神経の束には、体表の感覚を知覚するための神経と、内蔵を司る神経が一緒になっています。

関連痛はこれらの神経伝達が何らかの理由により入れ替わって、内蔵の異常を伝える信号が体表感覚を担当する神経に伝わってしまう症状。つまり、関連痛とは『神経の混線による脳ミソの勘違い』なのです。

もちろん軽視はできませんが、けっして一般的とはいえない症状。それなのにかなりの数の患者さんが関連痛について口にするのはどうやらテレビの影響らしいです。『た○しのブラック○スピタル』とか、『みの○んたのおも○っきりテ○ビ』とか、『ある○る大○典2』とかで取り上げられたのが口伝えに広がり、酒を呑む席で腰痛を愚痴れば「それは膵臓だよ」と同僚や友人に言われ、不安が大きくなって……よくあるケースです。

「この痛みを見落とすと命にかかわる!」とやたら不安を煽ったり、「これで絶対に治る!」といったキャッチーな紹介の仕方をするテレビ番組。結果、視聴者は右往左往することに。先にあげた番組はいずれも何らかの問題を起こしており、番組自体は終了しています。しかし、本質は変わってないんですよねぇ。こーいう垂れ流し、そろそろ止めてほしいもんです。

ちなみに当院の患者さんで、正真正銘ホンモノの関連痛だった方は片手で数えられるほど。キチンと統計として数字を出すには分母が少なすぎますが、その発生頻度は皆さんが思っているよりも遥かに低いです。

それからもうひとつ。どうしても不安を感じる方は、精密検査のできる大きな医療機関へ足を運びましょう。「検査して悪い結果が出たら怖いから……」ってのは本末転倒ですよ!

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