2011年1月16日日曜日

晒木綿の腹帯

「これ、取った方がいいですよねぇ」

来院された患者さんがシャツをたくし上げると、そこにはかなり使い込まれて手垢で汚れた医療用コルセット。私は思わず出そうになる複雑な表情を押し殺して「そうですね。お願いします」。

医療用コルセットは、腰の骨(主に腰椎)を動かないように固定することで痛みを緩和します。近年のものは非常に良く出来ており、クルリと巻いてベルクロで止めるだけでガッチリと固定でき、スプリングによるサポート機能まで備えているものも少なくありません。急な痛みに対する応急処置として、あるいは腰痛を押してでも動かなければならない方にとっては非常に便利なアイテムです。

ただねぇ……あまりに便利すぎるためにコルセットは思わぬ弊害を生んでいることも事実。

これを巻きさえすれば痛みを軽減することができるし、しっかり包まれて守られているという安心感も感じることができます。ゆえに心身ともに依存が生じ、腰痛が落ち着いても外すことができなくなるのです。

ここにおいて、医療用コルセットの優秀さが仇となります。本来、体幹を支えるべき足腰回り筋肉の仕事をコルセットが奪ってしまい、結果、楽をすることをおぼえた筋肉はあっという間に衰えていきます。こうなると、筋肉の衰えとコルセットへの依存の悪循環が始まってしまいます。

腰痛→コルセット→筋力低下→腰痛悪化→コルセット→さらに筋力低下……

一度この状態におちいってしまうと、身体を本来の状態に戻すにはかなりの時間がかかります。腰痛の根本原因を治すための施術も回数を重ねなければなりません。

当院でオススメしているのは昔ながらの晒木綿。一反10メートルの晒木綿を二等分し、5メートルを腹巻きのように腰に締め込むのです。

コツは腰骨(上前腸骨棘)に掛かるように少し低めの位置で、呼吸がしずらいくらいにギュウギュウにキツいくらいに締めること。反対側を家族に持ってピンと張ってもらい、自分が回転しながら巻いていけば簡単。

「あれぇ〜、お代官さまぁ〜!」って時代劇コントの帯でクルクルのアレ。あの逆をやるのです。最後は端を折り込んで、上からパンツを履けば、パンツのゴムが帯止めの代わりになります。

コルセットと比べると、脱着に手間がかかりますし、どうしても動いていると弛んできます。けれど、それが身体にとっては優しいんです。木綿生地の自然な伸縮性が、腹圧と釣り合って、身体に楽をさせすぎず可動域を確保しつつ、それでいて適度に患部をホールドしてくれます。

ちなみに左の画像を見てください。これは、私の故郷である宮崎県佐土原町で行われている“喧嘩ダンジリ”の様子。重量1トンを越えるダンジリ(太鼓台)を、どちらかがひっくり返るまでぶつけ合う勇壮な祭りです。注目していただきたいのは担ぎ手の装束。腰に巻いているのは、まさに私が今まで説明してきた晒木綿の腹帯なのです。当然ながら私も参加したことがあり、この晒木綿の効果は子供の頃から体感済み。だからこそ自信を持って患者さんにオススメすることができるのです。

余談ですが、私の父は若い頃から度を超えた“ダンジリきちがい”(すでに引退しているのに上の写真にもちゃっかり写っていますw)で、一時期担ぎ手が集まらずに祭りの存続さえ危ぶまれた際、担ぎ棒の一端に1人づつ、たった8人で1トンのダンジリを担ぎ、町中を練り歩いたというのが今も自慢のひとつ。そんな「ベラッするごたる(宮崎弁で『疲労困憊する』の意)」ムチャクチャをやっても父が身体を壊すことがなかったのも、この晒木綿の腹帯のおかげだったのではないかと私は推測しています。

おっと、話が横道に逸れましたが、ともかく腰痛に悩んでいる方やコルセットを外すのが怖くて巻きっぱなしになっている方は、一度晒木綿の腹帯を試してみてはいかがでしょうか。手芸屋さんや呉服店へ行けば一反1000円ほどで売っています。当院でも実費でお分けしておりますので、お気軽にご相談ください。

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