2010年12月16日木曜日

手炙り火鉢

私がガキの頃、火鉢はまだ現役の暖房器具だった。

寒い冬の朝、背中を丸めて火鉢に齧り付き、手を炙りながら真っ赤な炭をぼんやりと眺めるのが大好きだった。ついでに足も暖めようと火鉢の縁に足を掛けて祖父さんに怒られたこともあったっけ。

火鉢で焼いた焦げのある餅はなぜか旨かったし、サツマイモをアルミホイルで包んで灰の中に突っ込んで焼いたりもしたな。

義母が「傘立て代わりに」と母屋の玄関先に転がしていた古い火鉢を見ていたら、そんなことを思い出し懐かしくなった。

「お義母さん、これ、ちょうだい!」

嫁さんは「ねこ灰だらけ」になっちゃうと良い顔をしなかったが、今は珪藻土から作ったセラミック灰というものがあり、猫がいたずらしても掃除が簡単だし、ホコリも立たないからと説得。火起こし、火ばさみ、火消し壷、火箸とホームセンターや金物店を駆け回り揃えていく。

そして、ついに復活。ガス火で炙った黒炭を灰の上に据え、火箸で炭をあっち向けたりこっち向けたりして万遍なく火を廻していくと、火鉢の縁がぽおっと温かくなってくる。真っ赤に熾った炭からは時折ピシッという小さな音。火箸の先で灰の表面を均して遊んでいると、なんとも平穏な気分になってくる。

この風情、いいねぇ。
と、嫁さんが向かいに座る。

「あったかいねぇ」
「そうだねぇ」
「ストーブ消そっか」

二人で差し向かい、黙って手を炙りつつカリントウを齧り、お茶を啜る。
うん。この距離感、いいねぇ。日本人に生まれて良かったなぁ。

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