2008年11月22日土曜日

カルテNo.001 〜最初の患者さん その1

私が南龍整体術を学び始めて最初に診た患者、それは誰あろう私自身の嫁さんである。そもそも、私が南龍整体術を身に付けたいと思ったキッカケのひとつは彼女にあるのだ。

彼女が足の痛みを訴え始めたのは、もう6年以上前のことだ。当時、実家の家業は気が狂うほど忙しく、二人とも朝から晩までドロドロになって働いていた。「痛い痛い」と言いながら足を引きずり、それでも頑張り屋の彼女は休まず働いていた。私は「きっと疲れがたまっているだけなのだろう。そのうち良くなるさ」と重く考えなかった。私自身も疲れ果てており、考える余裕もなかったのが正直なところだ。

ところが、彼女の足の痛みはなかなかひかず、常に痛みや違和感を訴え、歩くのさえ一苦労な様子。こんな状態になって、初めて病院を受診する。当時、スポーツ外来があったG殿場のT病院だ。以前に書いたが、同時期に私も足を痛めており、夫婦そろっての受診となった。

T院長は骨盤のレントゲン写真を私たちに見せながら、こう言った。

「奥さんは臼蓋形成不全です。骨盤の太ももの骨が入る穴が生まれつき普通より浅く、体重を支えきれないために痛みが出るのです。これは手術をしないと治りません」

私はボンヤリとその診断を聞いていた。レントゲン写真を見てもなお、事の重大さ、深刻さを理解できなかったのだ。

「分かりました、手術を受けたいんですがどうしたらいいですか?」

言葉を発したのは嫁さんだった。術式や入院期間、リハビリの方法などを矢継ぎ早に質問していく。T院長は面食らった表情で、シドロモドロになりつつ質問に答える。

「保存療法で様子を見てから……」
「いえ、治るのならば手術を受けたいんです」
「しかし、すぐに決めなくても……」
「いいえ、できれば急ぎたいんです!」

ただでさえ言い出したら聞かない性格だ。治療を急ぐ理由もあった。もはや彼女の気持ちは固まっているらしい。私は「あ、治るんだ。良かったなぁ」と呑気にそのやりとりを聞いていた。帰りのクルマの中で、彼女は妙にはしゃいでいた。「良かったぁ。絶対治してやる。私、頑張るからね!」

しかし、私たちの希望はあっという間に叩き壊され、日本の医療の現実を嫌というほど見せつけられることになるのだ。

〜つづく〜

4 件のコメント:

隅田天美 さんのコメント...

ここでは初めまして。
隅田天美です。

現代医療の現状と限界……
今の医療は倫理面などからも崩壊が始まりつつあり、でも、実はかなりメンドクサイ問題もあって……

それから、質問なんですが、最近、右足の親指の付け根の出っ張りが痛いのですが治せませんか?

匿名 さんのコメント...

こんにちは。くらやみです。
ご無沙汰しております。

貴殿は文章がうまいので読むとどんどん引き込まれてしまいますね。
奥さんのエピソードは本気で治療を学ぶための布石となった流れなのですね。愛する人の為に、己の為に、色々ありますが、そういう辛い経験をした人ほど大きい治療家になるのです。

現代医療はメチャメチャですよ。今まではさんざん整形外科への罵詈雑言を誰はばからず言ってきましたが、そろそろやめます、大人になったので(笑)
それにどうせこっちの方がキチンと治せるって患者さん方にも分かってもらえるだろうし。

ところで、貴殿は水臭いですな。なぜキチンと開業したのなら知らせてくれないのですか?お祝いをまだしていないぞ。

匿名 さんのコメント...

くらやみ妻です。

開業おめでとうございます!

なかなか道場には、これからいけませんが

落ち着いたら素敵な治療院に遊びに行きますね♪

Cotaro.CACIMA さんのコメント...

>隅田さん

>現代医療の現状と限界……
>今の医療は倫理面などからも
>崩壊が始まりつつあり、
>でも、実はかなりメンドクサイ
>問題もあって……

私はそれを身を以て経験したと書いたつもりだが、読み取ってもらえなかったかな。

>最近、右足の親指の付け根の
>出っ張りが痛いのですが
>治せませんか?

それだけの情報では「治る」とも「治らない」とも言えないなぁ。まずは病院に行くなり、足に合う靴を履くなりしてみたらどうかな。

なお、どんな怪我でも病でも最終的に『治す』のは本人であり、我々はそのお手伝いをしているのにすぎない。君の「治せませんか?」という問いは、医療に依存しきって制度を破綻させてしまった多くの患者さんと同じ匂いを感じるよ。現場の人間にとっては気持ちのいい物言いではないな。

もし、そんな意図はなかったとしても、君は物書きを志望していたはずだったね。であれば、たとえネットの片隅の掲示板の書き込みであれ、もっと自らの文章に神経を使うべきだよ。蛇足ながら忠告しておく。

>くらやみ先生

この話は思い出すたびに怒りに身が震え、涙が流れ、後悔と慚愧の念でいたたまれなくなるので殆ど誰にも明かしていませんでした。

ただ、自分が南龍整体術を学び、臨床の場に立つようになって、違う視点から一連の事件を見ることができるようになり、私たち夫婦の体験が、同じように悩み苦しんでいる人の参考にでもなればと綴り始めた次第です。

とはいえ、私も同じく現代医療を批判したり攻撃する気はありません。今は、私に出来る事を出来る範囲で精一杯行うだけ。真摯に患者さんと向き合い、心を込めて施術をするだけです。これからも御指導御鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

なお、開院を祝ってくださるのでしたら、ぜひ静岡までお越しいただき、一緒に浴びるほど呑んでやってください。楽しみにしていますよ。

>くらやみ妻さん

こちらこそ『おめでとうございます』と言わせてもらいますよ。本当に良かったですね。落ち着いたらぜひ三人で静岡まで遊びに来てくださいね。